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新入社員の有給休暇は取得義務分から控除できる?

2019/10/29

新入社員に有給休暇を与えたい

新入社員の有給休暇と取得義務について面白い相談を頂きました。

「新入社員の欠勤を有給扱いしてあげたいがこの有給は5日の取得義務に含めて解釈することは可能か。」という相談です。

採用難でなかなか応募が集まらなかった中小企業が苦労して、やっとの想いで入社してくれた新入社員が体調不良で一日欠勤したとのこと。久しぶりの新入社員でとにかく大切にしたいとの思いにあふれた優しい経営者です。

たとえ新入社員であっても、やむを得ない場合の欠勤を有給扱いしてあげたい気持ちはわかります。既に有給休暇を付与された従業員であれば規則に則り有給扱いすることは問題ありませんが、有給休暇は原則として6カ月勤務を基準として権利が発生する法律上のルールであり、入社6カ月に満たない新入社員であれば有給休暇として扱う義務はありません。親切な会社であれば不憫に思い有給休暇を検討することは決して悪いことではありませんが、どのような対応が適切なのでしょうか。基本を理解しておく必要があります。

《有給休暇の取得義務化》2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定するなどして取得させることが義務化されています。

✅有給休暇の前借り

付与される予定の有給休暇を先に使いたいという話はもともと多い相談です。結論からいえば、有給休暇は前借扱いできず、基準日到来で法定通りの日数を付与しなければなりません。従業員と会社の間で合意があった場合でも、労働基準法はそれを下回ることが許されない『強行法規』であるため、控除した日数のみを付与した場合には労働基準法(39条)違反によって労働基準監督署による指導対象となるほか、労働者とのトラブルに発展した場合には「善意」で行ったとしても会社は非常に弱い立場になります。実務上は有給の前借りが大きな問題となることは極めて稀で、中小・零細企業であれば許可しているところも多くありましたが、有給休暇の管理運営ルールが厳格となった今は前借りを許可することはリスクが大きいためおすすめしません。

✅有給休暇の前倒し付与

入社日から6カ月間経過後に基準日の到来する有給休暇をあらかじめ前倒しして付与する会社もあります。例えば、入社日と同時に5日付与、6カ月経過後に5日付与で計10日とする取扱いについては、強行法規である労働基準法を下回ると扱われないため、法律上の問題を問われることはなく、分割して前倒し付与した有給休暇を労働者が自ら取得していた場合には5日の指定義務から控除することができますが、「先に付与した日を基準日として次年度より扱う」ことが必要なため、従業員の個人的な事情で前倒し扱いする場合には他の従業員との公平性に問題があるうえ、全体の制度として導入する場合には通常の基準日前に退職した従業員に対する前倒し有給の処理に困るためあまり望ましい方法ではありません。なお、退職者に対して前借した有給分を退職月の賃金等から控除することは労働基準法24条(全額払いの原則)との関係が問題となるため、前倒し(前借り)した有給休暇について付与日到来前に退職した場合には欠勤として精算するなど規則で明確にしておかなければなりません。

✅特別有給で扱い、法定通り付与する

どうしても特別に有給扱いとしたい場合には、就業規則において特別休暇を規程のうえ特別な事情と会社が認めた場合に限り法定外の有給休暇として付与する方法があります。会社としては法律以上の有給休暇を付与することになりそれ自体に違法性はありませんが、法律を上回って特別に付与した有給休暇が指定義務から控除できるかどうかの定めや指針は現在のところありません。労働者の心身の安息という有給休暇の趣旨に従って解釈するならば指定義務から控除して扱っても直ちに法律違反として処分される可能性は低いとは言えますが、そこまで従業員のことを真剣に考えている会社であれば、有給休暇の指定義務は問題なくクリアされているはずですので、後は社内の公平性の問題ともいえます。

有給休暇管理簿の保存義務

労働基準法施行規則(第24条の7)において、有給休暇管理簿の保存義務が規定されています。有給休暇取得が義務化される前は中小企業においては「残日数」と「次回付与」を管理する方法が一般的でしたが、有給休暇取得が義務化されてからはそれらに併せて、「基準日」「取得日数」も記録して3年間保管する義務があります。

労働基準法施行規則(第24条の7)
使用者は、法第39条第5項から第7項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第1基準日及び第2基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければならない。

まとめ

病気や家族の事情など、やむを得ない理由で欠勤する新入社員に対して欠勤扱いとするには経営者にとっては心苦しいことは十分理解できますし、その心は決して悪ではないとは思いますが、組織運営において例外を認めることは、後のトラブルや健全な秩序維持を崩壊させる一穴ともなりかねないため、安直に許可することなく慎重に検討することが必要です。有給休暇は労働者側も意外と基礎を知らない人が多く、適切な処理を行っても不満をもたれることもあるため、日ごろから有給休暇や労働基準法の基礎的なルールは教育を行っておくことが大切です。

 

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