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管理職を含めた全従業員の労働時間管理・把握が義務化されています!

2019/08/13

(最終更新日:2022.03.10)

客観的方法による管理職者の労働時間把握が義務付けられています!

2019年4月から施行された働き方改革関連法のひとつ、労働安全衛生法の改正によって管理監督者の労働時間把握が義務化されていますが、中小企業では取り組みの未整備、不十分な事業所がまだまだ多くあります。『労働安全衛生法』は、労働者が健康的に働くことのできる環境を整備するための法律であり、管理職者も、一般社員も、パート・アルバイトも、事業所で働く全ての従業員が健康で最高のパフォーマンスを発揮できるよう取り組みを進めていくことはあらゆる事業者で必要なことです。また、労働時間管理が不十分な場合は未払い賃金等のトラブルになるほか、労働基準監督署等の行政機関も調査を強化しており紛争や是正指導を受ければ事業活動に大きな支障をきたします。常に適切な労働環境を整備できているか確認しておきましょう。賃金トラブルはほとんどが労働時間管理の不十分さが原因です!

改正に至った背景

これまで特別条項付き36協定の締結によって実質制限なく時間外労働を行うことができましたが、同法改正による残業時間上限規制によって原則月45時間、年360時間、労使間合意による拡大(特別条項)でも年6回の回数制限に加えて月100時間、年720時間が上限とされ違反事業者には罰則が適用されることになりました。しかし一般従業員の労働時間が減少した分、管理職に回ることが懸念されています。本改正によって労働時間管理の対象となる管理職は全国で144万人いるといわれており、全労働者の2%を占めています。

管理監督者は重要な職務とその地位に応じた相当の報酬を受けるため、本来は労働時間の規制が不適当とされ法定労働時間や休日労働、割増賃金(深夜除く)などの適用を受けることがありませんでした。しかし実質は一般従業員と変わらない労働を行っているものも多くトラブルが多発しているにもかかわらず、一部もしくは多くの企業では残業に関する規制逃れのため、名目上の管理職に就けることにより堂々と残業代を支払わず、長時間労働を強いていることが長らく問題視されてきました。そういった、『名ばかり管理職』の過重労働を抑制するために労働時間の把握が義務化されることになりました。有給休暇の取得義務も管理監督者は適用されることになります。

俗にいう会社の任命した管理職と異なり、労働基準法上の管理監督者(労基法41条2号)とはその役職名に関わらず、労働条件の決定やその他労務管理について経営者と一体的な立場に立つ者のことを言い、おおむね以下の要件を満たすもののことを指します。

☑経営者と一体的な立場で職務を遂行していること

例)売上や社員の管理業務(採用・解雇・人事考課・労働時間管理)を行っている

☑出社、退社や勤務時間に厳格な制限をうけていないこと

出勤時間や退勤時間など労働時間の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること。
遅刻、欠勤などで処分を行う場合は管理監督者性は否定されます。

☑その地位にふさわしい待遇がなされていること

一般従業員と比べて1.5倍以上の報酬があると見込まれる場合などが該当します。時間換算した場合に十分でない場合は管理監督者性は否定されます。

上記の要件を一つでも満たさない場合は労働者とみなされる可能性が極めて高く、飲食店や販売業、サービス業における「店長」や「リーダー」のほか、企業における「課長」や「部長」であってもすべて残業代・割増賃金の支払い義務があり、また労働者として36協定のほか法律の制限を受けることになります。

役職者になったことで得られる給与が、残業代として得ていた金額を下回るケースもよく耳にしますが、法律上の管理監督者としては認められない可能性が極めて高く、未払い残業代の潜在リスクが高いといえます。

改正の要点

事業所は労働基準法109条の定めによって労働者名簿、賃金台帳や出勤簿、タイムカード等の労働時間の記録に関する書類(労働帳簿)を3年間保存しなければなりません。
この保存義務の対象に管理監督者も含めることを義務付けるよう改正されます。違反者は同法第120条に基づき30万円以下の罰金に処されることになります。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では次のように定めています。

(1)適用の範囲

労働時間規制が適用されるすべての事業場で、『労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る)を除く全ての者』とされていますが、2019年4月から『労働基準法第41条で定める者』から管理監督者が除外されます。なお、適用されない労働者についても適切な労働時間管理を行う責務があるとされています。

(2)労働時間

労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間が該当します。業務に必要な準備や片付けのほか、指示があれば即時に業務に従事しなくてはならない待機時間、業務上義務付けられた研修や教育訓練、使用者の指示による学習も労働時間に該当します。早朝から全社員整列してラジオ体操をしている会社はすっかり少なくなりましたが、あれは労働時間ですね。

(3)労働時間把握のための措置

使用者が自ら現認して適正に記録するか、タイムカード、IC カード、パソコンの使用時間記録など客観的な記録によって記録することが求められます。これらの方法によらず自己申告とする場合は適切な時間把握を行うよう十分な説明と、客観的記録から実態と申告が乖離する場合は実態調査を行い補正することが義務付けられます。また労働時間を超えて事業場に残留している場合は理由等を確認し、使用者の指揮下にあると認められる場合には労働時間として扱う必要があります。

なお、自己申告できる『時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない』等、労働者による労働時間の適正な申請を阻害する措置を講じてはならないこととされます。右記のような制度は当然、無効となります。

必要な実務上の対策

1⃣自社の従業員の働き方に合わせた記録方法で、始業から終業までの時間を1分単位で正確に記録

2⃣社外からでも従業員の勤務状況を把握できるようにし、サービス残業や虚偽報告を未然に防止する環境の整備

3⃣時間外労働時間が80時間を超過した従業員を把握し、医師による面接指導の希望を確認

医師(産業医)による面接指導の引き下げ

新たに施行される新ルールでは残業時間の基準が月100時間から80時間に引き下げられ、条件に該当する場合には管理監督者であっても医師による面接を受けさせる義務があります。また、研究開発や高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者についても新たなルールの適用とされ、医師による面接指導の対象者が拡大されることになります。医師による面接指導の義務を怠った場合には50万円以下の罰金に処されるため、企業としては違反に伴う行政指導、罰則の他、民事上の損害賠償に対する大きなリスクを抱えることになります。

上記のような義務を守るためにはパソコンのアプリケーションやスマートフォンの活用が不可欠となります。正確に打刻できるシステムの導入、オーバーワーク従業員のリアルタイム把握、リスト作成機能や、賃金の集計まで網羅できる勤怠管理システムの導入で、負担も少なく適切な管理がおこなえます。

紙によるタイムカード方式などでは実務上義務を果たすには極めて難しく法違反状態となる可能性が高いため、管理が不十分・不安のある事業者は早急に勤怠システムの導入を検討することをお勧めします。

上場準備(IPO)対策

将来上場を視野に事業活動を行っている場合にも本改正に関する事項は審査時の確認事項に該当します。10年前は上場審査で労働関連といえば社会保険の加入状況程度しか確認されなかったIPO審査は昨今、多くの労務管理事項が内部管理体制に関する確認として掘り下げて質問されます。上場を目指す場合には労務コンプライアンスを無視してかかることはできず、また上場予定の2~3年前から管理体制を構築しておく必要があります。『社会保険の加入状況』、『36協定に関する事項』、『労働時間管理に関する事項』、『管理監督者の該当者に関する事項』、『未払い残業代に関する事項』はIPO時に厳しく審査される傾向にあり、おろそかにしたままでは証券会社の承認を取得することはできません。➡IPOに向けた労務管理の基礎知識

おわりに

働き方改革関連法の中ではあまり注目されていない全従業員に対する労働時間管理の義務化ですが、未払い賃金の請求があってからでは手遅れです。既に賃金債権の時効が3年(旧制度は2年)に延長されており、広告などでも「未払い賃金を取り返しませんか!?」といった広告を見かけることが多くなりました。今後ますます増加する賃金未払い請求事件はすべて労働時間管理を適切に行っていなかったことに原因があり、労働トラブルや行政指導・処分だけでなく、助成金の不支給や公共工事入札の減点評価など、会社は様々な不利益を被ることが懸念されます。なかなか中小企業では目先の利益に目がいきがちですが、多くの不利益に比べれば労働時間管理の事務コストはわずかです。自社の管理職者に誤った適用が無いか、今一度確認ください。当社では自社の管理・運営方法に誤りが無いか、簡易的な診断や誤りがあった場合の適正化についてコンサルティングを行っております。不安な事業主様は是非お声がけください。

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