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企業が取り組むメンタルヘルス対策と労務管理の実務

2019/08/18

メンタルヘルス対策の実施で企業を強くする!

厚生労働省が平成30年に発表した調査結果によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は0.4%、退職した労働者は0.3%という結果でした。大企業になるほど休業者と退職者の比率に差があり、100人未満の中小企業になると同じ率になります。一概にデータを鵜呑みにはできませんが、中小企業では十分な復職プログラムや休業者のケアに手が回らず、休職イコール退職になっていることが推察されます。また、精神障害の労災支給決定件数は増加傾向が続いており、人材不足・採用難に苦しむ中小企業・小規模事業者でも相当数の『病んでいる従業員』がいるはずで、事業主としては従業員のメンタルヘルス問題は看過できないものになっています。

まず、心の病の代表格であるうつ病に罹患すると、療養のために長期間の休業が必要となります。休業するほどではなかったとしても、業務遂行能力は著しく低下し、また判断力や認知機能の低下によりミスを重ね、顧客へのサービス低下、ひいては顧客離れに直結する事態ともなりかねません。適切な措置を取らないまま社員を解雇・退職に追い込めば、解雇権乱用や解雇回避義務違反とされ、会社側の責任を問われることになります。

メンタル不調者を発生させてしまうような職場となってからでは、再発防止の対策に時間と費用を要し、いつ訴えられるかわからない紛争におびえながら事業を行わなければなりません。そして、メンタル不調者を発生させた多くの事業所では「まさかうちの会社が」と思っていたはずです。

運よく何も起きていない職場であればよいかもしれませんが、メンタル不調者はどの企業にもありえることで、グローバル化や競争激化によるしわ寄せを言い訳にできた時期は過ぎ、取り組みが不十分だった事業者は重いペナルティにより市場から追放される時代です。現代の経営者がメンタルヘルス対策を講じなければならないことは法律上も実務上も明白ですが、具体的にはどのように取り組み、また発生させてしまった場合にはどのように対策すればいいのでしょうか。

《メンタルヘルス対策の基本》

1次予防:職場環境整備(制度整備)

2次予防:個別対応(不調者の早期発見)

3次予防:休職者の支援(発生してしまった従業員のケア)

メンタルヘルス対策は段階的に取り組みます。業務外による怪我なども同じように、また元気になって働いてくれるように事業主が配慮し、また問題のあった制度は改善し、個別対応は社内教育によってレベルを高めていく必要があります。

《不調者の考えられる理由》

☑パワハラ・セクハラ等ハラスメントによる職場恐怖症

☑長時間労働による疲労の蓄積

☑トラブルの重なりによる急な精神的負担

失恋などで落ち込んでいる場合は時間薬で解決しますが、これらが職場の原因による場合は何らかの対策を取らなければなりません。

《客観的方法による自社診断(職場環境チェック)》

☑顔色が悪く元気のない社員がいる

☑新入社員がすぐに辞めてしまう

☑能率の低下、ミスが多く、社外のクレームにつながっている

☑既にメンタル不調で休職している従業員がいる

☑過度に体重の変化している従業員がいる

☑積極的に仕事に取り組む雰囲気が無い

☑ハラスメントの申告が過去にある

これらに思い当たることがあれば、従業員のメンタル不調の原因が会社にある可能性があります。わかりきっていると何ら対策を取らないまま放置すると大きなしっぺ返しを食らいます。事業主は現実に真摯に向き合い、誠実に対処するしかベストな方法はありません。

《メンタル不調者のサイン》

☑同じような凡ミスの連続

☑遅刻・欠勤の回数増加

☑服装や髪型が乱れている

☑朝から酒の匂いがする

☑昼間の居眠りで注意をうけている

これらは病んでいる領域の信号でありメンタルダウンの前兆とも考えられます。心の不調のサインは見逃すと悪化するばかりで改善する事は無いため、すぐに対応が必要です。

事業主の取り組むべき対策が不十分であれば当然、民事上の損害賠償請求の他、万が一自殺など発生させてしまえば完全なブラック企業の烙印を押され、将来永劫に事業活動にマイナス影響を与えます。心の病の判定については医師に任せるしかありませんが、心の病の疑いのある従業員には誠実に対応することが企業を守ることにつながります。事業主は現在と将来にわたる完全な対策を打っておく必要があります。

《メンタルヘルス対策に取り組む理由》

1.メンタルヘルス対策で従業員の心身の健康を維持

一人が脱落すると、周りが無理を重ね、ドミノ倒しのように崩壊していく悪循環に陥ります。従業員数の少ない中小企業・小規模事業者でこの状態になれば死活問題です。しかし逆に、十分な取り組みを行うことができれば組織のつながりもより強固なものとなり、モチベーションが高く、生産性が向上し、高利益を叩き出せる強い会社になる好循環につながります。

1.無理のない労務管理の実施でコンプラプライアンスの強化

働き方改革関連法の施行によってストレスチェックの実施義務化の他、労働基準法や労働安全衛生法等がより厳格になります。よって、いままで見過ごされてきた従業員に対する法律違反は法律の根拠を得ることによって行政指導や民事上の損害賠償請求などを行いやすくなります。現に、既に広告などでも労使問題の解決を専門とした弁護士や諸団体を見かけることが多くなりました。「事業主の労働関連違反は食える」ようになってきていることを表しています。一時期の過払い利息返還請求ブームの次は、未払い賃金やメンタルヘルス未対策による法律違反に向いています。

(管理職者が部下のメンタル不調に気づいた場合)上司への報告は必ず行っておかなければなりません。労働関係法は上司個人に対する不履行責任にも及ぶため、必ずメールなど、『記録の残る方法』で上司へ報告を行ってください。また、「何とかしろ」程度の返答しかなかった場合には、外部の専門家への見積を取るなど具体的な方法で上司へ承認の進言を行い、自己防衛を図る必要があります。本人が産業医等の医師の診断や休業を拒否した場合でも、その旨報告する必要があります。

《事業主が取るべき対策》

1.就業規則の見直し

☑休職の条件(診断書の提示)

☑休職の期間上限(期限到来で復職できない場合の退職扱い)

☑復職の条件(医師による復職への意見書提示)

就業規則への休職規定が欠けている場合は実際に休職の申し出があった場合に適切な対応が取れない他、休職命令を拒否された場合には打つ手がなくなります。

2.長時間労働削減取り組み

明らかな問題となる長時間労働の問題は早急に取り組み、是正する必要があります。➡残業削減コンサルティングサービス

3.従業員へのメンタルヘルス教育

ハラスメント防止窓口は社内に設置するだけでは効果が無く意味がありません。メンタルヘルス悪化の原因となるハラスメント行為をなくすことが目的のため、あらゆる方法を検討し実施することが予防法務となります。

人間の心は複雑で、職場内でかけられた言葉一つで大きく行動が変わります。暴言の飛び交う職場より、優しい声の掛け合いのある職場の方が当然メンタル不調者は減少します。特に、ハラスメント癖が染みついているクラッシャー上司などは、事業主自身が処分を徹底するなど強い決意で取り組む必要があります。➡ハラスメント防止は社外相談窓口が効果的

4.発生してしまった職場の事後対応

メンタルヘルス不調により退職した社員が会社に損害賠償を求めてくるケースが多発しています。このようなケースに誠実に対応しなければ、さらに大きな負担を強いられることになります。従業員の心の問題はひとつひとつそれぞれ違った複雑な要素を検討することが必要となるため、外部専門家を活用するのも効果的です。最近では少し高額ですが医師や専門家が連携して職場のメンタルヘルス対策を代行する『従業員援助プログラムサービス(EAP:Employees Assistance Program)』業者なども増えてきつつあります。

令和元年8月21日に厚生労働省から『平成30年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況』が公表されました。(有効回答:7,658事業所/労働者9039人)
現在の職業生活で強いストレスを感じている労働者は58.0%(前年58.3%)あり、
1⃣仕事の質・量が59.4%(前年62.6%)
2⃣仕事の失敗、責任の発生等が34.0%(前年34.8%)
3⃣対人関係(セクハラ・パワハラ含む)が31.3%(前年30.6%)
の結果となっています。

メンタルヘルスの改善方法は、『食事』、『睡眠』、『休養』、『軽い運動』を十分とれる職場環境にすることが原則です。ストレス高負荷の職場は今は従業員達の頑張りで何とか回っていても、いずれかならず限界が来ます。事業の源泉である大切な従業員がメンタル不調で離職しないよう、さらには生き生きと健康的に働くことができ、最高のパフォーマンスを発揮できる職場となるよう、事業主に求められる義務はますます高まっていきます。早い段階から取り組めば、他社との競争に一歩優位に立てることは間違いありません。

 

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