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トヨタ社員パワハラ自殺の和解から学ぶ中小企業の義務対策

2021/06/16

トヨタ自動車の男性社員(当時28歳)が2017年に自殺した件をめぐって、上司のパワハラをトヨタ自動車も認め、豊田章男社長が遺族に直接謝罪したニュースが大手新聞社の一面や社会面で大きく報道されました。

被害者の男性社員は上司から人格を否定する叱責等(アホ・バカ・シネ)など、日常的にパワハラを受けていたとされ、「死んだほうがまし」と遺族にメールを送付したあと寮の自室で命を絶ったとされており、トヨタは当初社内調査を踏まえてパワハラと自殺の因果関係を否定しましたが、労働基準監督署が遺族の主張に沿う形で労災を認定した直後、一転して因果関係を認め遺族に謝罪し、監督責任を怠るなど安全配慮義務違反を認めて解決金(金額は非公表)を支払ったといいます。

同社は再発防止策として、①家族や同僚などを含めた電話・ネットで匿名可能な相談窓口の統合、②職場相談員(精神科医など)の設置による早期発見の取り組み、③パワハラに対する就業規則の厳格化、④360度評価による非適正者の分析(対象者は1万人!!)、⑤マネジメント層に対するパワハラ防止教育の再実施とアンケートのフィードバック、など具体的対策を「労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」と題した文章でホームページに公表(2021.6.7日付)するなど、事後対応としてはまさに教科書通りの対応といえます。

電通のパワハラ事件をはじめメディアで大企業のパワハラ報道が大きく取り上げられることを目にする機会も増え、ハラスメントに対する認知は広がっているように思いますが、中小企業ではまだまだ表に出ない多くの陰湿なハラスメント体質が根強く残っています。なぜなら、多くの中小企業では株主と経営者が同一人であり、監査役、株主総会など外部ステークホルダーによるコーポレートガバナンス(企業を管理監督する仕組み)が機能せず事実上「自浄」頼りであること、問題が大きく取り上げられ売上が毀損する「風評被害リスク(レピュテーション・リスク)」を重要視していないこと、顧問として関与する税理士や社労士など外部専門家との力関係も歴然(気に入らないことを言うなら変えればいいだけ)であるなどパワハラの温床となる十分な理由があり、叱られることの無いワンマン社長や実験を握る幹部が殿様化する土壌がしっかり備わっています。

現に当社で数多くハラスメント相談を扱っていると、中小企業経営者の中にはハラスメントを軽く見ている方も多く、ハラスメントが濃厚な事案があっても、「本人(行為者)に悪気はない」、「される側(被害者)に問題がある」など、他人事のように話す経営者も少なくありません。それはブラック企業のイメージがある飲食等サービス業界や建設業だけでなく、医院(クリニック)や法律関係の士業事務所など、社会的にクリーンなイメージのある業種でも例外ではありません。

たしか、「お前らテープ回してへんやろな」とトップが発言した企業には激しい非難を浴びせていましたが、さほど変わりが無いように思います。経営者であれば加害者や被害者個人の善悪を評価する前に、問題が起きない組織作りが不十分であった反省と、『仕組みのどこに問題があったのか』をまず考えなければなりません。

今回もまた将来有望で未来ある若者の命が失われた痛ましい事案であり、行為者の厳罰を望む許しがたい事件と感じる方も多いと思いますが、企業経営の立場からすれば現実的には行為者個人に重い処分(例えば、懲戒解雇など)を下すことは極めて高いハードルがあり、トヨタでさえ「社会的批判をおそれて公表できない程度の処分しか下せなかった」と理解するのが正しいように思います。

一方で、従業員と訴訟の可能性が高い段階で、大企業のトップが遺族に謝罪、しかも直接何度も訪ねることは訴訟で不利になる恐れが高い「非常識」な行動であり、私たちのような中小企業経営者の立場からすればさすがD&Iにも熱心な豊田社長という感じがします(隠ぺい体質の他大企業と比べて)。

中小企業経営で従業員のハラスメント問題は、「弁護士から内容証明が届く」か、「スタッフの一斉大量離職」など、火が付かないと思い腰は上がりませんが、2022年4月には中小企業にも義務化されるパワハラ防止対策を怠り、致命的なダメージ(※)を負うことの無いよう、わが社含めて関係事業者にも周知していく次第です。

(※)①社名公表による採用難、②不十分な対策による大量離職、③配慮義務違反による被害者からの訴訟、④過度な処分を不服とする行為者からの訴訟など。

 

パワーハラスメントを原因とした従業員のメンタルヘルス不調は事業活動に影響を与えるほどの大きな問題となりやすく、また対策が遅くなるほど費用がかさむことに十分理解が必要です。当社では、企業としての安全配慮義務の徹底、パワハラ問題の早期発見による働きやすい職場構築を目的として、「職場のハラスメント防止研修」や利害関係の無い中立的な第三者による「ハラスメント等苦情相談窓口」を提供しています。

 

当社のハラスメント防止宣言・撲滅の取組

 

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