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パワハラ法律で上司は委縮する?義務化の基本と企業の対策

2019/08/28

パワハラ対策は規則の整備が重要!!

パワハラ法律といわれる『労働施策総合推進法の改正案』が5月に参議院本会議にて可決され、改正法が成立しました。厚生労働省が2016年に実施した実態調査によると、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は32.5%に上り、また都道府県労働局の実施する労働相談窓口でもパワハラ、セクハラによる「いじめ・嫌がらせ」相談件数は7年連続トップを独走しているなか、法律上明確な定義の無いパワハラに関しては判例を基準とした企業の自主的な努力に委ねられていましたが、本改正によってパワハラは定義され、企業が取り組むべき義務が法律によって定められることになり、大企業では2020年4月から義務化、中小企業(資本金3億円以下・従業員数300名以下)では猶予措置として2022年4月までは努力義務とされる見通しです。

これでセクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティーハラスメント(マタハラ)に続きパワーハラスメント(パワハラ)が、『行ってはならない』と法律で明記されることになります。

また、国際社会でもハラスメントを禁止する機運の高まりによって、1か月遅れて国際労働機関(ILO)ではセクハラ・パワハラを禁止する初めての国際条約が採択されました。

《ILOのハラスメント定義》『身体的、心理的、性的、経済的被害を引き起こす行為や慣行』と定義され、採択に賛成した日本においても批准するかどうか慎重に議論を進めていく姿勢です。

パワハラの定義

労働施策総合推進法30条の2第1項においてパワハラの定義が「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定められました。

《パワハラに該当しうる行為(パワハラ6類型)》

1⃣身体的な攻撃

叩く、殴る、蹴るなどの暴行のほか、丸めたポスターで頭を叩くなどの行為

2⃣精神的な攻撃

同僚の前で叱責されたり、他の職員をあて先に含めてメールで罵倒するなどのほか、必要以上に長時間にわたり執拗に叱るなどの行為

3⃣人間関係からの切り離し

一人だけ別室に移されたり、強制的に自宅待機を命じられるほか、送別会に出席させないなどの行為

4⃣過大な要求

新人に対して他の仕事を押し付け同僚は先に代えるなどの行為

5⃣過少な要求

運転手なのに草むしりだけを命じられたり、事務職なのに倉庫業務だけを命じるなどの行為

6⃣個の侵害

交際相手について執拗に問われたり、パートナーに対する悪口を言うなどの行為

《企業が講じなければならない措置》

雇用管理上の措置義務として相談窓口の設置や再発防止策への取組が義務化されます。

①パワハラについて労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他雇用管理上必要な措置

②パワハラの相談をした労働者に対して、解雇その他不利益な取扱をしてはならない

通常一般的なパワハラといえば上司によるものとイメージされますが、優越的な関係には、新任上司への経験豊富な部下によるものや、集団対1人のいじめ、過去の判例からは『荒げるなどの声の大きさ』や『暴力をにおわせる威圧的な態度』なども含まれる可能性があります。

性マイノリティに対するハラスメント(SOGI)やセクシュアリティの暴露(アウティング)についても今回の法改正によって指針で明記することが決議されたほか、直接雇用する労働者だけでなく今後は顧客によるカスタマーハラスメントや就活生に対するセクハラ行為、企業が講じなければならない措置の具体的な内容についても労働政策審議会で指針がまとめられていく予定です。

《措置の内容》

✅パワハラ防止への社内方針策定

✅パワハラ防止方針の周知・啓発・研修

✅社内における実態調査

✅苦情などに応対する相談体制(窓口)の整備

✅被害を受けた労働者へのケア

✅再発防止策の協議・検討

などが考えられます。

《法律上罰則規定が無いから大丈夫!?》

罰則は現在のところ規定されていませんが、労働局の指導などに従わない悪質な事業者は社名の公表ができる旨が設けられています。ハラスメント防止策の違反によって社名を公表された例はありませんが、メディアに取り上げられるような悪質な事業者はいずれ見せしめとして公表される日も近いはずです。また、中小企業は猶予期間があるからといって「いずれ時期が来たら取り組む」や「少数精鋭なので問題ない」などと甘く見てはいけません。企業には『使用者責任(民法715条)』等を理由に賠償責任を負うほか、法律で明記されたことによって労働局や労働基準監督署も助言・指導のみならず『是正勧告』までできるようになり、また裁判(訴訟)によらない紛争解決手続きとして労働者は『あっせん』より拘束力の強い『調停』が行えることになるため、パワハラに泣き寝入りしていた時代は終わり、今後ますます企業側が是正や解決金を支払う事例が増えると予想されます。

措置をとれば義務を果たしたことになるほか、罰則規定のない「ザル法」などと批判された法律ですが、初めてパワハラを定義した点で大きな一歩を踏み出したといえます。

《上司は指導すら許されないのか》

法制化の議論のなかには、『線引きが難しく現場が委縮する』という懸念が主張されていました。今回の措置が義務化されたことにより、上司からの『強い指導』は企業にリスクがありますが、それでも部下への指導は業務遂行に必要な義務です。しかし社内で措置をしっかりと行う土台があってこそ指導が活きるのであり、就業規則や窓口設置、マニュアル作成を怠っているにもかかわらず指導だけは厳しいということは許されません。ハラスメントの規則や方針を策定し、周知し、研修するなど教育を行っていればパワハラと扱われるような行き過ぎた指導を行うことも減り、離職者の減少、個々の成長に伴う組織全体の生産性向上まで期待できます。『適正な業務範囲内での指導』についても、年齢や仕事に対する考え方など現代社会に合わない考え方の人も多いため、十分な指導と、逸脱した場合の処分について押さえておくことが企業にできるリスク対策の基本です。

『自分はこうして成長した』

『厳しく教育しないとゆとり世代は成長しない』

『自分は数字を挙げているから正しい』

など、とんでもない考え方を持った『モンスター指導者』も多いため、事業主はハラスメント行為者に対する降格、降給のほか、適切な処分(懲戒規定)も勇気をもって実行していく必要があります。

《セクハラ防止も強化》

関連法律の改正も行われ、改正男女雇用機会均等法では事業主は自社の従業員が取引先などでセクハラ行為を行った場合、相手方から事実確認を求められれば協力するよう努力義務が新設されています。例えば、取引先の部長からしつこく1対1の飲食の席に誘われ、性的な言動によって精神的苦痛を受けた場合には担当者の変更を求めたり、労働局への申告のほか、民事上の損害賠償請求や悪質な場合には刑事告訴による法的手続きを行いやすくなるほか、会社へ相談したにもかかわらず何ら対策を講じなかった場合には企業の責任も問うことができることになります。

当社の取引先では顧客から飲食に誘われた場合には『1対1での食事は会社で禁止されている』と断るよう指導しているところもあります。

 

ようやくパワハラを規制する法律ができたので、これを機に会社全体の意識が高まり、ハラスメントの無い社会の実現を期待したいところです。既にセクハラ等に対する防止措置を講じている企業は範囲をパワハラにも拡大させることで、今あるリソースを活かして対応を行うことができるほか、未整備の事業所には当事務所でも関連法律の施行に伴い、研修や個別相談など本格的に実施していく予定です。

 

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