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残業時間の上限規制(働き方改革関連)が中小企業にも適用されます

2019/10/14

中小企業は2020年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されます!

既に大企業では2019年4月1日から施行されている時間外労働の上限規制ですが、猶予されていた中小企業もまもなく、2020年4月1日から適用されることになります。

日本・東京商工会議所が2019年1月に公表した中小企業を対象とした調査結果『働き方改革関連法への準備状況等に関する調査』によると、時間外労働の上限規制について「内容を知らない」と回答した企業は39.3%、「施行時期を知らない」と回答した企業は33.7%、法律の改正に対応済(または目途が付いている)と回答した企業は半数に満たない状態で、法律の認知度や周知状況はまだまだ不十分な状況ではありますが、「知らなかった」などの言い訳は通用せず、慌てて対応できるような性質のものではないため法違反とならないよう準備は十分にしておく必要があります。中小企業の時間外労働上限規制の基本的な事項について確認しておきましょう。

(出典:厚生労働省「働き方改革関連法解説」)

2020年4月1日から対象となる中小企業の範囲

中小企業の範囲は「資本金の額(出資総額)」と「常時使用する労働者の数」いずれかによって判定します。

業種(日本標準産業分類) 資本金または常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下または50人以下
サービス業 5,000万円以下または100人以下
卸売業 1億円以下または100人以下
その他(製造、建設、運輸、他) 3億円以下または300人以下

常時使用する労働者数のカウント

臨時的に雇用した労働者を除く労働者数で判断し、パート・アルバイトも含みます。

《派遣社員の扱い》

出向労働者や派遣労働者は雇用契約関係を基準に算入しますが、出向(在籍型)は双方へ算入します。派遣先企業が派遣元で締結した36協定に違反した場合には派遣先企業が法律違反となります。派遣元が大企業であっても派遣先が中小企業であれば、2020年4月以降の上限規制が適用となります。

経過措置

2020年4月1日前に締結した36協定はその期間内であれば上限規制は適用されません。よって、2019年3月31日を含む中小企業の36協定はその協定内容が1年間有効となり、また適用日前であれば旧書式・新書式いずれの提出も認められています。

猶予業種

以下の事業・業種は中小企業であっても上限規制の適用が5年間猶予(2024年4月1日以降適用)されます。

①建設の事業

②自動車運転の業務(タクシーやトラックドライバーなど)

※時間外労働と休日労働の合計規制(月100時間・複数月80時間)、時間外45時間6カ月制限は猶予解消後も適用されません。

③医師

※特別条項の上限が960時間となり、時間外労働と休日労働の合計規制、時間外45時間6カ月規制は猶予解消後も適用されません。

④鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業

◎新技術・新商品等の研究開発業務は本改正の適用から除外されています。

法改正のポイント

✅時間外労働の上限(限度時間)は月45時間・年360時間となり、『臨時的な特別の事情』が無ければこれを超えることはできない

✅時間外労働と休日労働の合計時間は月100時間未満または2~6カ月の平均で月80時間を超えることはできない

✅臨時的な特別な事情があって労使が適切に合意する場合(特別条項)でも、休日労働を含めて年720時間、複数月平均80時間、月100時間未満を超えることはできず、月45時間を超えることができるのは年の半分(6カ月)まで

特別条項(様式9号の2関係)

「臨時的な特別の事情がある場合」には特別条項を締結すれば限度時間(月45時間・年360時間)を超えて働かせることができます。旧書式であれば「業務の都合」や「業務上やむを得ない場合」など、適当な理由を記載しておけば時間外労働は年1,000時間でも2,000時間でも指摘されることはあっても受理を拒絶されることはありませんでした。新様式では上限に抵触するものは受理されず、法定要件を満たしているものの指針に適合しない36協定は助言及び指導の対象となります。

(特別な事情と認められる例)

●予算、決算業務、ボーナス商戦に伴う業務の繁忙、納期のひっ迫、大規模なクレームへの対応、機械のトラブルへの対応

法律条文では「通常予見することのできない業務量の大幅な増加に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」と規定されますが、決算業務やボーナス商戦に伴う業務の繁忙は時季的な業務で通常予測できるとも考えられ、予見することのできない臨時的な事情と解釈するのは厳しいところがありますが、行政解釈通達(2-6)によると「状況の一つの例として規定」と回答されているため、特別条項の条件は従来の考え方と大きく変わらないと解釈して問題ありませんが、労使間で自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があります。(例:人事異動シーズンに伴う業務の繁忙)

過半数代表者の選任

中小企業の6割では正しく36協定を締結していないと言われています。これまでは「残業代さえ払っていれば」大きく問題となることはありませんでしたが、法の厳格化に伴い、監督処分の権限を執行しやすくなります。36協定の労働者代表の選任違反は協定自体が無効と扱われ、立入調査の際には選任のプロセスもチェックされることが予想されるため、選出方法の記録を残しておく必要があります。

✅管理監督者でないこと

✅挙手、選挙等の民主的な方法で選出すること

✅使用者の意向に影響を受けないこと

違法のリスクとペナルティ

上限規程を超過する労働を行わせた場合には労働基準法(32条)違反の規程(119条)により【6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金】が適用されます。36協定の上限規制に対して違法に働かされた労働者は労働基準法違反の刑事告訴と不法行為に基づく慰謝料等の損害賠償請求が可能となります。現実的に十分ありえる処罰として企業は社名公表の他、書類送検や罰金のほか、労働者に対する慰謝料、未払賃金等を支払わなければならないリスクが高まるため、法令順守の社内監査は必ず行っておかなければなりません。

中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の猶予措置

中小企業は月60時間を超える時間外労働に対する5割以上の割増賃金率が13年間も猶予されてきましたが、2023年4月1日以降猶予措置は廃止され、150%以上での支払いが義務付けられます。深夜労働を加算すると175%となるため大変な負担となります。長期的な観点から長時間労働の見直し、職場環境の改善が必要です。

多様な働き方に寛容な組織作りの推進

今回の上限規制の目的の一つに、長時間労働を是正することでワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなる労働参加率の向上を上げています。つまり、いろんな働き方やいろいろな人達を自社で雇用し、長時間労働の負担を分散して多様な働き方を社内で推進していくことが法律に適合させていくために最適な方法といえます。採用難・人材不足によって集まらないと嘆いていても改善することはありません。まずは人が集まるような魅力的な職場となるよう多様な働き方、長時間労働の是正に取り組むことが大切です。

改正労働基準法に関するQ&A(厚生労働省労働基準局)

おわりに

今後の労働基準監督署の立入調査ではタイムカード(タイムレコーダー)以外の入退館記録やPCのログなど、記録と実態の乖離は確認されることになります。また、全国の業種で組織された労働組合(ユニオン)や人権団体、弁護士等による労働法違反ビジネスの拡大によって長時間労働を社会から排除する機運は高まっており、さらに上限規制が短縮されることや36協定の届出時調査、不受理など今後進むことはあっても後戻りすることはありません。予算や人材確保に難題のある中小企業にとっては大変厳しい法改正が進みますが、取り組みの遅れたツケは後になるほど多く返さなければなりません。一歩でも先行して法適合を進めていくことが大切です。

 

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