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内部通報制度認証(WCMS認証)って何?

2019/12/03

2019年2月より消費者庁は、優れた内部通報制度を整備し運用する企業に対する『内部通報制度認証(WCMS認証)』のうち『自己適合宣言登録制度』の申請受付を開始しています。

※WCMS(Whistleblowing Compliance Management System)

内部通報認証制度は、『自己適合宣言登録制度』と、『第三者認証制度』の2種類によって企業の内部通報制度を評価し公的認証を付与する制度で、2月より先行して自己適合宣言登録制度が開始、大手企業を中心に続々と事業者の登録(認証)が公表されています。自己適合宣言登録制度の運用状況を踏まえつつ第三者認証制度は導入開始されることになっています。

近年社会を震撼させた自動車会社やゼネコンによる品質データ改ざんや不正会計など企業の不祥事は内部の関係者からの内部通報によるものが多く、企業においては不祥事を予防するだけでなく、万が一の不祥事が発生した時に迅速に事態を把握し、被害や影響をいかに最小限に抑えるかが重要な課題になっています。監査部門や社外取締役などの指摘で発覚した時には既に問題が大きくなった後のケースが多く、後手後手に回って企業体制の批判を浴びれば多くの人たちに悪いイメージとして長く記憶に残ります。問題の芽を早期に発見し先手を打てる体制とするためには社内の生産現場である従業員からも広く窓口を開放しておく必要がありますが、実態としては通報する側にとって心理的なハードルの高さがあり、通報窓口としての機能が『形だけ』になっている会社も多くあります。

国内総生産の約6割を占める個人消費の増大と経済好循環の実現に向け、効果的な内部通報機能を実効性の高いものとして機能させることで、コンプライアンスの強化やリスク管理だけではない『自浄作用』に対する期待が高まっています。消費者庁は事業者のインセンティブを高めて内部通報制度の取り組みを促進するため、「内部通報制度に関する認証制度検討会」を設置し、2018年4月に報告書を公表しました。

実効性のある内部通報制度を適切に整備・運用している事業者では、従業員等からの警鐘が早期に経営陣等に届き、自浄作用により問題が未然防止又は早期発見され得るため、その事業者が提供する製品・サービスは安全・安心である可能性が高い。このため、内部通報制度はコンプライアンス経営の推進や安全・安心な製品・サービスの提供を通じた健全な事業遂行の確保や企業価値の向上を図る上で必要不可欠なものであるとともに、企業経営を支える基本的なシステムである内部統制及びコーポレートガバナンスの重要な要素であるといえる。(中略)これらを受け、「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン(H28.12.9消費者庁)」をふまえ内部通報制度を適切に整備・運用している事業者が高く評価され、消費者・取引先からの信頼、企業ブランドの向上、金融市場からの評価、公共調達における評価、優秀な人材の確保等につなげていくことができる社会経済環境を醸成し、事業者のインセンティブを高め、その取り組みを促進することによって内部通報制度の質の向上を図り、もって国民生活の安全・安心を確保するため、最終報告書及び消費者基本計画工程表等を前提に、認証制度の導入に係る事項を検討したものである。(H30.4内部通報制度に関する認証制度検討会報告書

WCMS認証である自己適合宣言登録制度の要件は厳格な基準を審査するものではありませんが、ガイドラインを踏まえた内部通報制度の構築がなされていることを自ら宣言し認証をえることは対外的にも内部通報に対してオープンな企業体制をアピールすること、消費者からの信頼確保など企業価値の向上(ブランディング)に効果があるほか、実際に通報する際の心理的ハードルを下げることができます。

内部通報体制を講じていたにもかかわらず、早期発見が遅れたためメディアの強烈な批判にさらされる例はどの企業でも起こりえることであり、経営者にとっては「他人事」ではありません。資金的な体力が十分ではない中小企業でハラスメントの問題やSNSなどの悪評が拡散(炎上)すれば、事業活動だけでなく会社存続にまで大きな影響を及ぼす時代です。

企業の不祥事を防止するためには「不祥事を起こさないこと」が当然ではありますが、起きてしまった後のセーフティネットも必要です。しかし公益通報者保護法を踏まえたガイドラインに準拠する体制を維持するためには社内での周知や継続した教育などコストも無視できません。WCMS認証は社内でいかに立派な体制を講じているかを外部にまでアピールするものであり、不十分な体制のまま認証を取得しても期待した効果が見込まれないどころか、実態と乖離しているようでは逆効果になります。実効的な内部通報制度の整備・運用・維持のためにはまずガイドラインを参考に、無理のない範囲で体制構築を検討することや、担当者への過度な業務負担とならないよう配慮する必要があります。内部通報制度のガイドラインにおけるポイントは以下の4つの項目があげられています。

1.通報対応の仕組みの整備

経営幹部の役割を内部規定等において明文化することなど適当な仕組みの整備

2.経営幹部から独立性を有する通報ルート

例えば社外取締役や監査役等への通報ルート当、経営幹部からも独立性を有する通報受付・調査是正の仕組みを整備することなど

3.利益相反関係の排除

非通報者(法律違反等を通報された者)が通報事案の調査・是正措置に関与してはならないほか、調査等通報対応の業務を外部委託する場合には中立性・公正性に疑義のおそれ又は利益相反となる法律事務所や専門機関の起用を避けること

4.安心して通報ができる環境の整備

情報が可能な限り早期に勝つ幅広く寄せられるようにするため、通報窓口の運営は敷居が低く、利用しやすい環境とするよう工夫することなど

(『公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン』)

連日報道される企業の不祥事やパワハラ、セクハラなど企業の行き過ぎた行為によって、内部通報制度の機運はますます高まっています。認証を取得したからと言って不祥事が無くなるわけではありませんが、企業のコンプライアンス意識は業績に大きな影響が出ます。仮に不祥事が発覚してしまった場合に、当局による調査や役員等経営陣に対する責任追及がされるときには企業として十分な体制を講じていたかが大きな問題となり、WCMS認証が有利に働く効果も期待できるのではないかと言われています。何も問題が無い会社であれば必要ないかもしれませんが、些細だと思っている問題で足をすくわれることの無いよう、日ごろから従業員との信頼関係をしっかり築き、またケアできる体制の構築をできる限り早期に行っておくことが必要です。

 

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