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中小企業の労務管理【リスク回避と競争力向上】

2019/09/09

「労務管理とは何か」

労務管理は既に日常になじんだ言葉で様々なところで使われています。人事・総務部門が担当している業務といえばその通りですが、労務管理についてもう一度考えてみます。なぜなら当事務所の経験上、企業の規模を問わず、完璧な労務管理を実施しているところはかつて見たことがありません。そもそも完全な労務管理は存在するのでしょうか。

当事務所は社労士事務所なんだから、労務管理は完璧だろうといわれることもありますが、決してそんなことはありません。従業員10名未満の零細企業で適切に労務管理を行うことの難しさは身をもって痛感しています。長時間労働の是正取り組みや従業員の給料を上げること、有給休暇を取得させること、予期せぬ従業員の体調不良や従業員同士の意見の不一致など正解のない応用問題に悩みが尽きることはありません。過去には十分な人材が確保できずに1か月100時間を遥かに超える法律違反の時間外労働によって従業員の大量離職も経験しており、不十分な労務管理が招く人材不足は本当に苦しいものです。何度も間違え、失敗した悔しい経験ばかりなのは経営者の皆様と同じです。それでも、将来まともな企業になるためには、若いころから「会社を躾ける」ことが大切で、日々完全な労務管理を目指して真剣に取り組んでいます。

労務管理とは?

『労働に関する業務を適切に管理すること』といえます。

1950年代、日本との貿易摩擦等によって経済力を失いつつあったアメリカで発想された『人』に対するマネジメントを考える手法である『Human Resource Management(HRM:人的資源管理)』から始まったといわれますが、大切なのは、「適切に」管理することです。こちらは今では大企業でもすっぽりと抜け落ちて、「労働者を管理すること」が目的となった状態になっていることがよくあります。成長に必要な労務管理とはその「状態」を指すものではなく、「行為」を指すものだと解釈すると腑に落ちます。

労務管理としておこなわれていること

✅求人、採用

✅人員配置・人事異動

✅雇用契約管理

✅規則類整備(法改正対応)

✅人事評価

✅労働時間・有給休暇管理

✅給与計算業務

✅退職手続き

✅福利厚生制度の運営

企業の人事・総務部門が通常おこなう労務管理は多岐にわたり、その種類は様々です。そして、「新たな人材確保」の施策と「今いる従業員の定着」のための施策は一体であり、どちらも切り離して考えることはできません。また、残業時間の削減や社会保険料の適正化、パート・アルバイト従業員の勤怠管理(調整)など個別の労働契約についても考える必要があり、いずれも事業運営には欠かすことができません。

いまでこそ中小企業の採用難がメディアに取り上げられていますが、昔から中小企業は人材不足です。労務管理に時間をかけられないから人手不足なのか、人手不足だから労務管理に手が回らないのかわかりませんが、いずれにしても悪循環に陥っていることは間違いありません。

適切に労務管理を講じるということは、従業員が安全・安心に働くことのできる労働環境を提供することにあり、完全なものも完成もあり得ません。しかし法改正や市場動向、自社の業績や事業継続のための従業員育成など、常にブラッシュアップを重ね、その時々において最適な方法を模索し続けるしかありません。

中小企業に義務付けられる働き方改革関連法

★働き方改革関連法の順次施行状況(中小企業施行日)

1⃣残業時間の罰則付き上限規程(2020.4)

2⃣有給休暇の取得義務化(2019.4)

3⃣勤務間インターバルの努力義務(2019.4)

4⃣月60時間を超える割増賃金率(50%)の中小企業猶予措置廃止(2023.4)

5⃣産業医の機能強化と労働時間把握義務(2019.4)

6⃣同一労働同一賃金の原則導入(2021.4)

7⃣高度プロフェッショナル制度の創設(2019.4)

8⃣フレックスタイム制の期間拡張(2019.4)

9⃣パワハラ防止措置の義務化(2020.4)

努力義務については取り組まなくとも重いペナルティを受けることはありませんが、法律上の義務に取り組まないコンプライアンス意識の低さは従業員のモラル、モチベーションを低下させるほか、行政指導や労働者とのトラブル、社名公表や罰金、送検など厳しい処分を受けることにもなりかねないため、法改正に合わせて規則の見直しが必要となります。いずれにしても、現状を把握し、問題を洗い出し、制度の新設、見直しを検討する作業は常に取り組まなければなりません。

《中小企業の人材競争力が弱い点》

  • 賃金制度の納得感が低い
  • 福利厚生制度が充実していない
  • 労働時間と休暇のメリハリがない
  • ワークライフバランスが充実しない
  • 人間関係が強すぎる、合わない上司に当たれば退職するしかない
  • 個人一人ひとりの責任と負担が重い
  • ハラスメント防止に具体的に取り組んでいない
  • 労働関連の遵法意識が低い

中小企業を嫌い、大企業へ若者が集中する理由はこれらの点が考えられます。

《中小企業の人材競争力が強い点》

  • 経営者と距離が近い
  • 仕事の自由度が高い
  • アイデアの採用機会が広い
  • 変化が早く刺激がある
  • 即時実行の柔軟性

ということはつまり、競争力の弱いネガティブなイメージの払拭に取り組み、外部にアピールすることができれば人員確保にも他社との競争で優位に立てることは間違いありません。

おわりに

適切な労務管理は既存社員の能力を高め、採用力を高めることにつながり、業績をけん引するための基盤を構築することができます。従業員が納得できる環境で能力を最大限発揮することができれば、いかなる難題も超えていける強い組織となるはずです。

働き方改革関連法の施行や労働局・年金事務所など行政庁の調査が強化されていることのほか、退職代行業者など労働ビジネスの勃興や未払い残業代の紛争など、中小企業を取り巻く環境は無視できないほど厳しくなる一方です。しかし嘆いても改善することは無く、適切な労務管理に向けて行動することが唯一の解決方法です。適切な労務管理の取り組みに遅れた企業は淘汰され、取り組みを進めた企業は繁栄する。そんな時代が到来していると感じます。

 

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