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給与計算にミスが発覚!残業代の未払いはどう修正すればよいのか
2019/12/13
12月10日、セブン-イレブン・ジャパンが労働基準監督署の指摘によって加盟店の従業員の残業手当に一部未払いがあったことが大きくニュースで報道されました。対象者は3万人を超え、総額は5億円近くに上るとして、世間から冷ややかな目で見られ、関係者や報道陣からはセブンペイに続くガバナンスの問題点が激しく追及されています。
日ごろから給与計算業務にあたっている担当者からすれば、「通常ありえない」事件であり、ましてや労働基準監督署に指摘されるまで気づかないなどは確実に「匂う」と受け取られても仕方の無いケースですが、他人事と思わず給与実務を担当する方は自社でも構造上の問題が無いか十分見直ししておきましょう。
給与は従業員が提供した労働に対する対価であり、言われるまでも無くミスすることは許されません。労働と対価は労働契約という信頼関係を構成する主たる要素であり、給与計算にミスがあれば会社の信頼を大きく損なうことになり正しく支払うことは会社の義務です。給与計算のミスをするような会社は従業員のミスを偉そうに指摘することはできません。それほど重要です。
長期間気付いていなかったり、何度も同じミスをしたり、故意に過少な支払いをしている会社は責められて当然ですが、人が行うことには必ずミスが発生します。また、ミスに対して責任を徹底的に追及するような厳しすぎる組織では発覚が遅れたり、追及を恐れて報告「できない」ケースもあります。
複雑な給与制度は間違いやすい
セブン-イレブン・ジャパンだけでなく、給与計算の間違いはそのほとんどが、「残業代の計算間違い」です。いまはクラウド給与計算ソフトのおかげで簡単に、ほとんど正確に計算されるようになりましたが、ほんの20年前まではエクセルと電卓で計算していましたのでミスの発生確率は相当高かったはずです。それより前はどうしていたのか知りませんが、特に変形労働時間制やみなし残業代(固定残業代制度)、複数の手当支給を行っている場合など、賃金規定が複雑になるほど間違いは多くなります。今回のセブン-イレブン・ジャパンでミスの発覚した、「職責手当」は当然に残業代に含めるものですが、「精勤手当」は残業代の基礎に含めるかどうかは専門家でも一瞬考えるほどです。(一瞬考えるだけで基本中の基本につき間違えることはありません)
残業代の基礎となる賃金から除外できる手当(労基法37条5項,労基法施行規則21条)
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 一か月を超える期間ごとに支払われる賃金
「精勤手当」や「皆勤手当」は法律で支給が義務付けられているものではなく、支給の有無については会社の自由な判断にゆだねられています。「皆勤」は無欠勤、「精勤」は無欠勤でなくとも仕事を頑張っているとして支給される性質の手当であり業務に関連する手当は全て割増賃金の基礎となる賃金に含めるのは基本中の基本です。
労働者は出勤するのが当然なのに出勤すれば手当を出すというのはちょっと理解できませんが、出勤を促すためという理由を裏返せば、欠勤やストライキの抑止で導入されていたのでしょうか。有給取得の場合に不支給としているならば有給取得の抑止ですね。
セブン-イレブン・ジャパンではFC加盟店の従業員に対する給与計算を一手に担う専門チームであったはずですが、当方の知る給与計算の外部委託先であっても間違いが発覚し、責任問題になったケースがあります。弘法も筆の誤りと言えば怒られますが、弘法大師ではない我々はミスしないよう日々創意工夫し、それでもミスが発覚した時のリカバリーが大切です。
賃金修正の手順
1.未払い(過払い)賃金の再計算
2.清算方法の検討
3.対象従業員への説明とお詫び
4.清算処理の同意取得
5.清算処理の実行
実務上は一つ一つの手順にも多くの確認事項がありますが、在職者であれば現金で精算するのか、翌月の給与で精算するのか、それとも賞与で調整するのか等、基本だけではわからないような多くのことを考えなければなりません。(正解は翌月給与で精算するのが一番マシ)
退職者に未払がある場合はさらにやっかいで、まず連絡が取れない場合にはどうすればいいのか、連絡が取れたとして未払い給与から所得税を源泉徴収するのか、社会保険料の等級誤りは遡及すべきなのかなど、一担当者レベルでは決裁できない多くの事項が発生します。
法律論だけでは賃金間違いは解決しない
中小企業で給与計算に間違いが発覚した場合、従業員との信頼関係が無ければ未払い賃金を労働基準監督署へ通報すると脅されるかもしれません。賃金債権の時効は現行法上2年とはいえ、過去2年以上にわたって間違いがあった分を一方的に2年で切り捨てることはできるでしょうか。また会社の支払能力を超えるほどの高額になった場合に、間違えていたのが悪いのだから全額支払うのが当たり前、と会社を倒産させてまで支払することはできるでしょうか。逆に過払いがあった場合、ミスを棚に上げて返還を強制させることはできるでしょうか。
給与計算の間違いが発覚した場合には「重要かつ緊急」の処理が必要な最優先の仕事になるため、担当部門は大きなプロジェクトが突然湧いたような緊張感になります。給与計算の修正にマニュアルなどありません。ミスが発覚した時にはまず、従業員に謝罪し、清算方法を相談することが大切です。これって普通の対人関係と同じですよね。
しかし未払いのミスに比べて過払いのミスが少ないのはなぜでしょうか。。。
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