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面接無視、内定辞退を回避するために(採用広告担当者必見)
2019/12/27
ほんの10年前までは人材を募集する場合には求人フリーペーパーや新聞の折り込みチラシなど集合的な求人チラシが主流だった時代から、近年では主たる採用手法として、「ダイレクト・ソーシング」や「リファラル・リクルーティング」、「オウンドメディア・リクルーティング」と、インターネット上で求人活動を行う時代へと一気に変化しました。
ダイレクト・リクルーティングはいわゆる「スカウト」による手法で国内ではビズリーチが有名で、求職者が経歴と希望職種を登録しておけば企業からオファーを送るタイプ。リファラル・リクルーティングは古くから縁故採用などと呼ばれ、会社の従業員等から紹介を経て入社する手法など、採用にマーケティングを取り入れた手法で人材確保する会社も多くあります。
そして、オウンドメディア・リクルーティングの最大手であるインディードの台頭によって、あらゆる求人情報が安価に掲載され、簡単に検索できるようになり、採用は「広告費用をかけていれば応募が来る」時代は終わり、選ばれるための会社となるために多くの会社が知恵を絞り、しのぎを削りあう「求人戦国時代」になりつつあります。
そんななか、運よく応募があったとしても面接に来ない(面接スルーと勝手に呼びます)、内定を出したくても連絡が付かない、返事が来ないなど、入社辞退されることも増え、中小企業は従業員と雇用契約を締結することが一筋縄ではいかないほど難しくなっています。最近では簡単に内定辞退の手紙を作成できる「内定辞退セット」が売れているとも言います。
当事務所も採用支援を行う中、面接スルーと入社辞退となるケースは多々あり、「どうすれば面接にこぎつけることができるのか」といった相談は少なくありません。入社手続きのハードルを極限まで下げることはもはや常識ですが、面接に来ていただくためにはどのような工夫をすればよいのでしょうか。
面接スルー、入社辞退を回避するために
近年はスマートフォンの普及によって、仕事探しの半分以上はスマートフォンを経由して行われています。
最大手のインディード(indeed)のCEOが、「誰でも簡単に転職できる、1クリック、1分で手続きできる社会を目指す」といった発言や広告に触れたことを覚えている方もいらっしゃると思います。既に社会は簡単に転職できる社会を実現しつつあり、オウンドメディアによって気軽に応募・転職できる光の陰に、面接スルー・内定辞退があります。
古くから採用人事を担当していた方であれば、「今の若者はけしからん!」でしょうが、社会の変化に取り残されないように、また人材不足を悪化させることの無いように、ワンクリックでの応募とはいえせっかく興味をもって応募いただいた入職希望者のモチベーションを維持し、気持ちよく職場に勤務していただくまでの円滑な手続きを行わなければ現状の改善は見込めません。辞退した方を責めず、自社ですぐに取り組みできる簡単なポイントをまとめましたので検討してみてください。
1.速やかな返信
応募者が特定の中小企業にこだわることはほとんどありません。複数の会社へ応募し、複数の内定を取り、その中の一社(又は複数社)を選ぶ。将来有望な若年層や優秀なキャリア層は沢山の企業から自分に最適だとおもう会社をふるいにかけて選んでいます。マーケティングの手法と同様に、レスポンスタイムの短縮は必須です。返信まで1週間程度の時間を要している会社もありますが、徹底している本気の会社では応募から1週間で内定を出すところもあります。つまり、返信を保留している間に他社に入社が決まっていることは往々に発生しています。
即時返信、即時面接を徹底し、また、写真貼付を求めたり、職務経歴書を用意させるなどは応募者に余計な時間を掛けさせることになるため、極論は手ぶら面接・履歴書不要(後日)・オンライン面接まで検討し、応募者の熱を冷めさせる時間を経過させないことが重要です。好きな人からのLINEに即時返信すると「意識してる」と思われるかもしれなくて恥ずかしいのは高校生まで、会社の応募者へは即時返信でオッケーです。
1.ハードルは限界まで下げる
インターネットからの応募は情報が少なすぎるため、たくさん質問したい気持ちもわかります。また、求人広告担当者と面接担当者が違う場合や社長が直接面接する場合などは、応募者がどんな人物か、詳細を事前に面接担当者へ引継ぎしない場合には「何の情報も無いやないか」と広告担当者が責められるケースがあります。
しかし、応募者に対する質問や確認の連絡は、応募者にとっては「注文」であり、上から目線のわずらわしい会社と印象されてしまえばエグジット(離脱)されることになります。自社で設けている基準の範囲外となる応募者を除き、応募してくれた候補者へは面談まで質問を我慢し、ハードルを限界まで下げて面接に来社いただけるような社内採用業務担当者間の意思疎通を取っておく必要があります。企業が応募者を選考するのと同時に、求職者からも企業は選考されていることを忘れてはいけません。
1.履歴書主義は古い
近年のIT企業では履歴書を不要とする代わりに、求職者が自分で書いたソースコード(プログラム文字)を提出したり、コードやキャリアを公開している人へオファーすることが増えています。それは、「学歴と社内のパフォーマンスに相関関係は無い」と結論付けた米国グーグル社の調査結果をはじめ、皆が疑問に思っていた採用慣行を覆す手法です。つまり、履歴書・職務経歴書中心の採用慣行は既に時代遅れになりつつあり、また時代遅れと認識している求職者層があり、それら求職者層は先進的で優秀な層とも一定の一致があると考えられます。
履歴書を郵送させるなど、メールで十分な作業をわざわざ求職者に負担させたり、スナップ写真やSNSのアイコン(少し前はプリクラを履歴書の写真にする議論もありましたね)はけしからんなど、もはや過度な負担と思われるような古き良き文化を踏襲しないように検討することが必要な時代です。もちろん、人事担当者は面談だけでなく、個人のFACEBOOKなどSNSを調べるわけですが、実務上の面接では「簡単な履歴書を持参いただく」、若しくは「面談後に入社希望の場合は後日履歴書を郵送かメールでお送りいただく」程度で離脱されない工夫を行う必要があります。
どうしても履歴書中心主義の慣行は抜けずらく、入職した社員が「使えない奴」だった場合に簡易な選考は責められやすいポイントですが、装飾しやすい履歴書中心の雇用慣行にはリスクが無いのかどうか、会社全体で採用に対する取り組みの足並みをそろえなければなりません。ピカピカの履歴書に期待して面接したらガッカリ。よくある話ですが社長が履歴書フェチなら採用難は免れないかもしれませんね。
1.面接の熱を冷めさせない(歓迎を印象付ける)
多くの離脱者がいる中、面接まで足を運んでくれた求職者はよほど熱心で、企業に良い興味を持ってくれています。面接や選考は企業それぞれのスタイルがありますが、ここでもレスポンスタイムを意識し、採否の連絡は速やかに行うことが内定辞退者を減らすポイントになります。日常生活であまり目にすることの無い「労働条件通知書(内定通知書)」を速達で送ったり、来社いただいた感謝の意を添えたり、社内で歓迎しているイラストをつけたりして、「自分はこの会社の入社を歓迎されている」と強く印象付けることが大切です。残念ながら不採用とした方に対しても感謝をきちんと伝え、決して非礼な扱いをしてはいけません。また、小規模な事業者で担当者、役員、社長など大企業並みに何度も面接を重ねる会社もありますが、面接の回数が増えるほど離脱率は高くなります。
できる限り一度で完結するように、応募者の手間を省けるような面接方法を工夫しましょう。
1.入社日のモチベーションを維持する
入社日初日にまで至った場合でも気を抜いてはいけません。翌日や3日で辞めたなどと、まるで入職者が根性無しかのような言い方をする経営者を多く見てきましたが、当社からすれば、「入社日の対応が悪かった」の一点につきます。入社初日に緊張しない人はいません。入社日の緊張をほぐしながら、職場環境や他の従業員とコミュニケーションをとれる場を設けたりしてうまく馴染んでいけるような配慮を行うこと。派手に装飾したり新歓コンパ(歓迎会)を開いたりするのは蛇足ですが、いつもの来客対応のように簡単な入社のレクリエーションを行いましょう。
社長が直筆で入職者に手紙を渡す会社を知っていますが、とても好例でいい会社です。自分が新入社員なら何が嬉しいか。そんなことを考えなければ、新入社員はまた3日で辞めます。
反面、面接時に聞いていた能力が著しく欠けていたり、病歴や素行不良を見抜くことは慣れた担当者でも困難です。入社した後であっても法律上も幅広い裁量を認められている「試用期間」内に解雇可能なように、就業規則や労働条件通知書(雇用契約書)類はしっかりと整備しておく必要があることは言うまでもありません。
1.それでも面接スルー・内定辞退は発生する
面接スルー・内定辞退率をゼロにすることはできません。良くて10%、半数が面接に来ないと言う事業主もいます。もしかしたらお店の前まで来て、やっぱりやめようと思った人もいるかもしれません。面接に来なかった方や内定辞退者のお断り文書から本当の理由を読み解くことはできません。単に労働意欲が無くなったのか、会社に嫌な点があったのか、家族に反対されたのか、他にいい会社があったのか。それらの個人的な理由を責めても辞退率を減らすことはできません。
事業主にできることは、事業主の行動は全て求職者の選考材料となっていることを理解し、いつもの仕事のように丁寧に、親切に、正直に行うことで面接スルーと内定辞退の確率を下げていくことしかありません。当社が相談を受けた企業は応募者への返信(レスポンス)に問題があるケースがほとんどの為、よく辞退されていると思ったら返信方法を見直しすることをお勧めします。
おわりに
多くの中小企業が採用難・人材不足に苦しんでいますが、全ての中小企業が苦しんでいるわけではありません。求人していなくても応募が来る零細企業も沢山ありますし、1名の枠に100人以上の応募が来る会社も特段珍しくなく、そういった人気のある会社は「基本に忠実に、求職者に親切に」しているだけのことです。今後ますます採用難は悪化し、従業員だけでなく、求職者を冷遇するような会社は人材不足から脱することはできないと断言します。今後の採用マーケットでは社内の情報は外部へも筒抜けし、都合の悪い情報を隠すことができないスケルトン化がどんどん進んでいきます。皆様の会社は従業員をどう想い、どんな行動で魅力を伝えていくでしょうか。中小企業は岐路に立たされています。
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